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毎年、5月31日は世界禁煙デー(World No-Tabacco Day)
   5月31日〜6月6日は禁煙週間です。

禁煙体験記懸賞募集入選作品集profile

昭和62年・平成10年におこなった禁煙週間事業の禁煙体験記懸賞募集入選作品集です。(目次のページへ)

優秀作(平成10年)「我が禁煙の記」

「我が禁煙の記」

                                      佐 藤  学(札幌市)

 「禁煙なんぞ簡単さ。俺なんか、毎日禁煙しているぞ」と、友人はうそぶく。その冗談めかした言い方の中には、やめたいのにやめられない無念さと、禁煙を成功させた人に対する羨望や妬みが含まれている。
 私は喫煙者の多くが、実は禁煙を実行したいと心中願っていると思う。皆、苦痛なしに禁煙を実行できたらどんなに良いかと考えている。仕事に追いまくられて体中に重い疲労を感じたり、何事もうまく行かずにいらいらが募ったりした時などの一服は、一時的に疲労を忘れさせ、心を落ち着かせてくれる。
 そんな時のたばこは実に良い。たばこの一服によって得られる一時の心の平安。しかし、そこにこそ、喫煙者を、また、その周りにいる人々をなし崩し的に早すぎる死へと誘う悪魔の存在をはっきりと認識しなければならない。
 私は現在、禁煙を始めて半年になる。たばこの味は学生時代に覚え、20年以上も吸い続けた後での禁煙である。きっかけは、珍しく自分の机の周辺を整理しようと思い立った私が、偶然にも本棚の隅から17・8年前に発行された禁煙法の書かれた新書版の本を発見したことであった。
 買ったことすら忘れていた1冊の本。驚いた。「どうしてその時に、俺はたばこをやめなかったのか」肺癌、口腔癌、食道癌、慢性気管支炎、肺気腫、心筋梗塞、狭心症、動脈硬化、脳出血、胃潰瘍、流産、早産、皮膚の老化、火事、交通事故、時間とお金の無駄遣いなどなど。これほどのたばこの害を読んで知っていながら、たばこをやめなかった自分が信じられなかった。
 結婚の遅かった私は、44歳という年齢の割には子供はまだ幼く、5歳と10ヶ月の2人である。私は早死にするわけには行かないし、また、妻や子供達の命を縮める権利も持っていない。私は「たばこをやめたい」と切実に思った。そして迷わずその本の勧めのとおりのことを実行する決心をした。
 禁断症状を考慮して、比較的仕事の軽い時期を選んだ。また、妻の協力はどうしても必要だったので、妻にだけ禁煙を始めることを打ち明け、それ以外の人には一切知らせなかった。そして、果物を中心とする食事と水を大量に飲むという、禁煙法を始めた。
 1日目。まだ禁断症状もさほどなく、気持ちもしっかりしており辛くはなかった。「これは、いけるぞ!」という気分であった。
 2日目。脳が揺すぶられるような目まいを感じ始めた。床が近付いたり遠のいたりして見えた。非常に不快であった。何事も夢の中でしているような感じがした。しかし、意外にもたばこを吸いたいとは思わなかった。
 3日目。目まいはますます強くなり、ついには頭痛と吐き気を催した。たばこを吸えば治ることは分かっていたが、たばこの諸悪を頭に浮かべて、なにかと耐えることができた。
 4日目。禁断症状は峠を越した。頭痛、吐き気は消え去り、目まいがやや残っていて、口が寂しい感じがするものの、気分はかなり楽になった。ただ、このころから他人の吸っているたばこの匂いが気になって仕方なくなり、そらには腹立だしく感じるようにすらなった。今思えば、吸いたいという気持ちを抑制していた反動ではないかと思う。
 5日目以降。体の不快感はどんどん消えていった。呼吸が楽になり、匂いや味に敏感になった。体の中が清潔になったように感じた。また、階段を上がる時の息切れは殆どなくなり、1日の終わりに感じていた疲労感も明らかに軽減した。ただ、他人の吸うたばこの匂いに対する苛立ちはその後素週間続いた。20年以上に渡る喫煙習慣は根深く、深層心理には「吸いたい」という欲求があったのだと思う。しかし、自分のからだが綺麗になったという感覚、食事の旨さ、安心して我が子に頬ずりができる喜びがその欲求を押さえつけてくれたようだ。
 半年を経過した今では、たばこの匂いに対しては、自分のからだが汚されるような感じがして、今でも腹立だしくなるが、たばこを吸いたいと言う欲求は心底なくなったと感じている。
 今では、何故もっと早く禁煙しなかったかと悩む毎日である。それにしても、何故日本にはこんなに喫煙者が多いのだろうか。また、何故どこでも喫煙できるのだろうか。
 私は、昨年の春まで仕事の関係で東南アジアのある国で3年程生活してきたが、屋内のレストランで禁煙席のない店は一つとしてなかった。幼児を抱える親として、常に禁煙席を選択できたのには大変助かったが、帰国して、日本のレストランには禁煙席のないとい現実に愕然とした。隣の席の幼い子供連れの両親が席に着くなりたばこを吸いはじめたのを見て、我が目を疑った。
 日本は、たばこの害の知識については、数少ない後進国の部類に入ると思う。このままでは、日本国民がたばこによって受ける損害は計り知れない大きなものがある。出来ることなら、行政及び民間サイドからの、たばこの害についての協力な啓蒙活動が望まれる。

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   昭和62年・平成10年禁煙週間事業
    禁煙体験記懸賞募集入選作品集
     2005年5月24日発行

 
発行者 北海道禁煙週間実行委員会
 
連絡先 札幌市中央区北4条西12丁目
     
北海道労働福祉会館4階
     
社団法人北海道衛生団体連合会内
     
電話 011−241−7924
 
編集人 黒木俊郎・鎌田慎一
  

事務局

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北海道労働福祉会館 4階
北海道公衆衛生協会内
北海道禁煙週間実行委員会

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