昭和62年・平成10年におこなった禁煙週間事業の禁煙体験記懸賞募集入選作品集です。(目次のページへ)
最優秀作(昭和62年)「孫と約束した禁煙」
「孫と約束した禁煙」
西 村 進(清水町)
私の禁煙が成功したのは、孫との堅い約束であった。喫煙して40年。その間、何度か禁煙に挑戦したが、意志の弱さから失敗した。定年退職して5年目の60年秋ごろからせきとたんに悩まされ、とくに就寝してからがひどかった。こんな状態が続くと、肺がんではないか、また肺結核におかされたのではとの予感が去来するようになり不安な気持ちで精密検診を受けた。幸い異常はなかったので吸い続けていた。私の喫煙量は1日25本程度で普通であった。
冬休みはいり孫が遊びに来た。ある日の朝、学習中、私の煙草にむせている孫を見て「これはいけない」と大きな衝撃を受けた。いまが禁煙のチャンスだ、せきもたんもやむかも知れない。孫からも喜ばれるかもと決意した。孫に「じいちゃんは正月から煙草を止める。煙草代で来年、東京ディズニーランドに連れていってやる」と約束して禁煙にはいった。
半世紀近く吸い続けてきたものをやめるのであるからつらかった。体験者の方は経験されたように1週間から10日間はイライラし、夢遊病者になった状態だった。会合などで隣席から流れて来る紫煙と香りの誘惑に何度かぐらついた。その都度「いま吸えば孫に約束違反と信義を問われる」「成長の過程にある子どもを裏切っては申し訳がたたない」と自分自身をしかり励まし克服してきた。退職して在室が多くなったのも幸いし1ヶ月過ぎ2ヶ月経過した。だんだん忘れて来るようになった。
8月になって孫名義の旅行貯金は8万円になり費用は十分となって盆に来る孫が待ち遠しかった。盆に来て通帳を見せると中1になる腕白坊主の孫は涙を見せていた。ことしの冬休みにくるとき旅行の日程表を作って持って来るように申し渡すと、実感となって喜んでうなづいていた。11ヶ月になってもうだいじょうぶとの自信ができた。どんな誘惑があっても孫との約束はほごにできない。
孫との旅行費ができたので、私自身の思い出として煙草代相当分で図書を購入している。月4、5冊を買うことにしている。いままでは無計画に衝動買いが多かった。いまは朝日新聞、北海道新聞の広告、書評を参考に計画的に求めている。9月から始め、もう15冊になった。
退職後、町内会長、町内会連合会事務局長としてささやかながら奉仕し、さらに週1冊平均の読書は私にとって、すばらしい人生を過ごさせてもらっているものと自負している。せきは出なくなりたんもとまった。孫からの信頼度も深まってきた。禁煙万歳である。
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昭和62年・平成10年禁煙週間事業
禁煙体験記懸賞募集入選作品集
2005年5月24日発行
発行者 北海道禁煙週間実行委員会 連絡先 札幌市中央区北4条西12丁目
北海道労働福祉会館4階
社団法人北海道衛生団体連合会内
電話 011−241−7924 編集人 黒木俊郎・鎌田慎一 |