「ごほうび禁煙法」
横 山 邦 雄(室蘭市)
何度となくチャレンジしてみても、いつも途中で挫折する。意志の弱い自分には、やはり無理なのかと諦めかけたりもしたものだが、ちょっと発想を変え、余り気張らない禁煙法を試みることにした。それは名付けて「ごほうび禁煙法」
いきなりスパッと禁煙しようとせず、段階を踏みながら徐々に禁煙に向かう方法である。 まず最初は、三日間の禁煙を目標にチャレンジする。そして、その目標がクリアーできたならば、一時禁煙を中断し、一箱(20本)のたばこを吸ってもよいことにする。このたばこ一箱が禁煙の目標日数を禁煙できた自分に対する「ごほうび」なのだ。
私がこれまで禁煙できずにいた要因のひとつに「もう二度とたばこが吸えない」と思うその反動で、それが無性に残念に思えて、頭の中がたばこのことで膨らんでしまうのである。頭の中がたばこのことでとらわれてしまうと、もうこの際、煙の出るものなら何でもよくなる。灰皿の中に転がる吸い捨てのたばこ「しけもく」に、戸惑いながらも手を伸ばす。指でつまみ、周りに着いた灰を爪ではじいて口へと運ぶ。背を丸め、とがらせた口でそれを受け取り、「しけもく」の先端に集中し、ゆっくりライターで火をつける・・・。
「あ〜あ〜」情けない。みじめだ。自己嫌悪する。
こんなぶざまな思いまでして禁煙なんかしたくないと開き直ってしまっていた。度重なる禁煙の失敗。そこで私は考えました。この「ごほうび禁煙法」ならば、例え失敗しても、また思い直したときに三日間の禁煙からスタートできる。また、この方法だとたばこが吸いたくなっても、「あと二日で吸える。あと一日我慢すれば・・・」と思うことで意外と辛抱できたのである。
三日間の禁煙がクリアー出来たら、次は五日間に挑む。そしてたばこ一箱のごほうび。その次は七日程度に挑戦。次は十日程度にと徐々に禁煙期間を増やしていった。たとえ数日の禁煙であっても、ごほうびの一本目は頭がクラクラする。しかし、三日程度では、それもすぐに慣れ二本、三本と「スパッ、スパッ・・・」といく。けれども、七日、十日と禁煙期間が長くなるにしたがって、ごほうびの一本目が快感よりも不快感の方が勝るようになってきた。
もともと、私の体質はたばこに合わないとは感じていたが、年齢的なことも伴って体が拒絶反応を示したものだと思う。次第に、ごほうびの一箱の喫煙も楽しみでなくなっていた。そのうちに、禁煙にチャレンジしていることを時々忘れてしまっている様にもなった。
例え他人の喫煙などで、たばこのことを想い出してはみても、しばらくぶりにたばこを吸った時の不快感が先に立ち、「吸おうかな」と思う気持より「やめておこう」が勝るようになった。
そう感じるようになると、禁煙にチャレンジしているという意識も薄くなりはじめ、ごく自然に、たばこを吸わない生活リズムになっていたように記憶する。
従って、私はいつから禁煙したのか、よく覚えていない。もう、5年以上は経っていると思うのだが・・・。
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昭和62年・平成10年禁煙週間事業
禁煙体験記懸賞募集入選作品集
2005年5月24日発行
発行者 北海道禁煙週間実行委員会 連絡先 札幌市中央区北4条西12丁目
北海道労働福祉会館4階
社団法人北海道衛生団体連合会内
電話 011−241−7924 編集人 黒木俊郎・鎌田慎一 |