昭和62年・平成10年におこなった禁煙週間事業の禁煙体験記懸賞募集入選作品集です。(目次のページへ)
佳作(昭和62年)「気楽にやめてみようよ」
「気楽にやめてみようよ」
加 藤 弘(札幌市)
高血圧症と診断された私に、医者がとくに悪影響が強いタバコはやめるよう忠告してくれたのは7年前だった。1日40本ものヘビースモーカーの私は、考えてはみたものの、急には自信がなく、徐々に本数を減らしていくことにした。しかし、それは1週間も続かなかった。なんともいらいらして、やり切れない落ち着かない気分にさせられてしまうのだ。
次に作戦を変え、ニコチンやタール少量のタバコならいいだろうと勝手に理屈をつけ種類を切り替えた。これも数ヶ月してふと気がついたら、軽く吸える故に、いつの間にか本数がふえ結果的には何も変わりなしで薬もよく効かず、血圧は上がりっぱなしだった。顔なじみの看護婦には、いつ血管が破裂しても知らないよと驚かされてもどうにもならない。どうにでもなれといささかやけ気味だった。とはいうものの体調の悪いことおびただしい。
それが5年前のある日、札幌地下街を通ったら嫌煙運動かどうか数十枚のパネル写真が目についた。その中の、健康人と喫煙者の肺の比較写真がとくに私の目を引いた。喫煙者のそれは、ちょうど石炭ストーブ時代を体験した私の目には煙筒の中のすすと同じにみえ、私の肺もあのようににと思うと、なんともいやな気にさせられた。
よし、どうせダメだろうがもう一度挑戦してみようと思った。まあ3日がいいところだろうなどと気軽な調子でとにかくやってみた。たったの3日だからと、まったくのゼロ本にすることにした。
一応、職場で宣言。にやにやしながら悪友は、わざと鼻先に煙を吹きつける始末。コンチキショーと思いながら、1日だけでは意地でもとがんばった。はや3日のことはあきらめ、あすは尻から煙がでるほど吸ってやるぞと腹の中でわめいていたことはいうまでもない。脂汗を流しながら・・・。
翌朝、驚くべき変化が起きた。なんとも爽快ではないか。この調子では2日目もと・・・。それから5年、思ったよりらくにすーとやめてしまったのである。
いまでも居酒屋で友人と語り合うときなど、たまには2、3本吸うことがある。別に目まいもしないし、それはそれなりに味わいがあると思っている。だからといって元に戻ることはなくなり、ふだんはなじまない。こうなればしめたもので、まさに本物の禁煙者と思う。
いま考えてみれば気負わず深刻にならずに気楽に挑戦したのがよかったのではなかったか、というのが私の結論である。
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昭和62年・平成10年禁煙週間事業
禁煙体験記懸賞募集入選作品集
2005年5月24日発行
発行者 北海道禁煙週間実行委員会
連絡先 札幌市中央区北4条西12丁目
北海道労働福祉会館4階
社団法人北海道衛生団体連合会内
電話 011−241−7924
編集人 黒木俊郎・鎌田慎一 |